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レビュー『君死にたもう流星群』


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君死にたもう流星群


著 松山 剛 先生
イラスト 珈琲貴族 先生


 二〇二二年十二月十一日。それは僕が決して忘れられぬ日。

 その日、軌道上の全ての人工衛星が落下し、大気圏で光の粒となり消えていった。

『世界一美しいテロ』と呼ばれたこの現象にはたった一人、犠牲者がいて……!

 引きこもりの少女・天野河星乃を救うため、高校生の平野大地は運命に抗う。

「まさか読み終わる頃に自分が泣いているなんて考えもしませんでした」

「切なさ、絶望、一縷の望みと試行錯誤の日々、さわりだけ読むはずが先が気になってもう止まりませんでした」

「この作品を読んで僕も夢を諦めたくなくなりました」

 発売前から多くの人を感動に巻き込んだ『宇宙』と『夢』がテーマの感動巨編スタート! 

※公式サイトから引用




 ええとだね、今こうやってアプリを立ち上げて、感想を書こうとしている訳なんだけれども。

 言葉が出ない。いや本当に。

 この手のネタはもう掘り尽くされて、何を書こうが他作品と比較されがちで飽き飽きしていたんだけどさ。

 そういうの抜きで、面白かったよ。

 もう、放心状態になるような読後感って久しぶり過ぎてさ……。

 取り敢えず、必死に書いては見るけれども。

 上手く伝わなかったら申し訳ない……。

 ではッ!!




 本作は、簡単に言えば『タイムリープ物』である。

 後悔の過去を変えるため、記憶だけを過去に送って未来を変える。

 『Steins Gate』を思い浮かべれば想像は楽だろう。

 実際、『大切な人を救う為』だとか『ほうおう』だとか『記憶の過去への転送』だとか意識していると思われる設定は多いが『夢』というテーマの存在がこの作品独自の味を出している。

 先ず、読後の感想から。


『          』


 はい、何も考えられなくなってたとさ。

 ある程度、全方面に耐性を持ってると自負している僕なんだけど、もう、半分読み進めた時点で涙腺がゆるゆるだったよ。

『夢を諦めない、君に』と帯に書かれたキャッチフレーズの通り、この作品は『夢』が前面に押し出された展開をしている。

『デザイナー』『医者』――そんな子供が描いているようなそれらを、叶えた人間達が主人公の周りを取り巻いている訳だ。

 序章、そんな彼らに劣等感を覚えながら『どうしてこうなった』と親の残した遺産を食い潰しながら生きていた主人公は、彼らと同じく夢を叶えた『宇宙飛行士』になったヒロイン『天野河星乃』のことを毎晩夢に見、その度に悪態を付くような感情を覚えながら日々を過ごしていた。

 終ぞ遺産すら食い潰し切った主人公は、ふらふらと『宇宙飛行士だった』彼女の家に赴く。

 直前、知り合いに『星乃』の映像を見せられたからなのか、厳重なロックを正当に解除して入ったその部屋の中で主人公は『星乃』と邂逅することになる。

――『宇宙での事故により』既にこの世には居ないはずの彼女と。

 起動したパソコン、その中で。

『星乃』は確かに、主人公と通話状態にあった。

 彼女の持つ技術により、時を超えた通話が成立していたのだ。

 しかしそこは墜落しつつある場所、そのとき彼女は既に『死が確定』していた。

 様々な遺言を残して、そして最期には『たすけて』と残して主人公の目の前で彼女は散った。

 幼馴染の心配する留守電すら耳に入らず、主人公はひたすらに星乃のパソコンの中に残されていたデータを読み続けていた。

 曰くそれは『過去の人間に今の記憶を書き込める理論』――新たな『タイムマシン理論』


『スペースライター』


 夢も何も無く、絶望的で無味な日々を過ごしていた主人公は、目の前で『星乃が死んだ』ことによりやっと動き出す。

 星乃を救うために、彼は今を捨てて過去に飛んだ――。



 この作品のヒロインである『天野河星乃』は現在において『命を失って』いる。

 それを書き換えるために、過去に飛ぶというわけなのだが、まぁここまではどんな導入であれど『お約束』のようなものだろう。

 しかしこの導入部分ですら、心を打ってくる。

 回想のような形で主人公は何度か夢を見る訳だが、その夢は全て『星乃』との過去の記憶である。

 『夢が足りない』と星乃に言われていた主人公だが、現在の堕落の原因やこの『夢』のことを考えれば、主人公にとってのそれは『星乃の存在』――即ち、現在の主人公は『夢を喪った』状態であると言える。

 夢を持ち続けて、それを叶えた友人の存在は対比の意味があるのだろう。

 しかし、喪って尚『夢』に縛られ続けていた主人公は、過去に飛べる手段を得たことにより蘇ることになる。

 作中に登場する『ほうおう』という人工衛星があるが、これは『星乃を助ける』という目的の暗示以外にも『主人公が立ち上がる』と言った意味合いもありそうだ。

 ここら辺はどうしてもかの『鳳凰院凶真』の存在がチラつくが……偉大すぎる先人だ、仕方がない。

 しかし、かの作品と違ってこの作品のタイムトラベルは『8年』という長い期間であるし、何度も繰り返して試行錯誤していくタイプの物語では現状ない為、逐一持ち出して比較するのは愚かだろう。

 と言っても、1巻時点ではまだ『仕方がない』範疇であるが……ここからの展開次第だ。

 ただ、高校生の少年少女の持つ『夢』の存在は、差別化と言って問題ない。

 それをこれからどう絡めていくのか、それ次第で全く別のベクトルの作品として昇華することを期待している。

 さて、この手の作品においては共通して最も大切と言える部分がある。

 それは『伏線』だ。

 過去の言動が未来に繋がる、そんな展開の前振りなわけだが、この作品にも勿論多く盛り込まれている。

 その多くは1巻で回収される為言及は控えるが、一つだけ僕が引っかかったものについて書いていきたい。

 あ、悪い意味ではないからね。

 作中で『ジュピター』という多重本人認証システム『虹彩・指紋・パスワード』が登場するのだが、それについてだ。

 ジュピターとは日本語で『木星』のことである。
 
 巨大な太陽系惑星であるということは良く知られていることだが、この惑星の特徴として『木目のような模様』というのがある。

 幾重にも層になっているように見えるこの惑星を多重の施錠システムの名前にしているのは単純にセンスがあるが、主人公の携帯の着信音も『グスターヴ・ホルスト』の『惑星第四曲』――『木星』である。
 
 日本では歌詞がつけられて『ジュピター』として歌われたことでかなり有名なあれの原曲である。

 また、作中で『エウロパ』というハンドルネームで殺害予告をネット掲示板に書き込んで、更には実行に移そうとまでした犯罪者が登場するのだが、このエウロパというのは木星を中心に周回する『衛星』である。

 更には、改編され分岐した世界で流行っていた『網膜認証アプリ』を開発しているとされる会社名が『ジュピター社』である。

 言うまでもないが、『虹彩』と『網膜』は目のどの部分を参照するかが違うだけで類似したシステムである。

 
――めっちゃ木星好きなんだね作者!!


 なんて、まさかそれだけじゃないだろう?

 この作品の根幹を形作る設定の一つなのは考えるまでもないだろう。

 今の段階で考察できることは少ないが、少し掘り下げていこう。

 先ず、この作品におけるタイムトラベルとは『目に焼き付いた記憶を過去に転送する』ことにより行われる。

 本文からの引用だが『人間の記憶は、87%が視覚からの情報とされる』らしく、網膜からそれを読み取って過去に読み取った網膜データに超光子速度で転送することによってタイムトラベルを可能とするらしい。

 そう、網膜を読み取って、だ。

『ジュピター社』が開発し、配布している網膜認証アプリ。

 認証の為には勿論、網膜を記録しているであろうことは疑いようもない。

『ジュピター社』が星乃の家の『ジュピター』施錠システムと全く関係ないものであるなんてことはまさか無いだろう。

 施錠システムは、天才たる星乃が開発したものであり、即ち『ジュピター社』とは星乃が関係している会社であることは疑いようもない。

『ジュピター』が読み取っているのは虹彩であるが、虹彩をスキャンする時は当然網膜も同時にスキャンしているだろうし。

 まさかとは思うが、大規模なタイムトラベルでも今後起こるのだろうか……?

 トラベル前の主人公の着信音が『木星』であるのも、『星乃』を諦めきれていない、という心理描写なのだろうか。

では『衛星』であるはずのエウロパが『母星』であるはずのジュピター『星乃』やその関係者に刃を向けているのは何故なのか?

 今後が実に楽しみになる伏線だと、僕は信じている。

 第1巻として、これ程2巻が待ち遠しい作品は僕のライトノベル読み人生の中でもそうそうなかった。

 某科学ADVを知っている人間でも、それを知っていた上で楽しめる作品であることを保証する。

 というか、僕自身がそうだしね。

『感動に飢えている』読者には特におすすめだ。

 各書店でも、多めの入荷が見られたし、是非とも近くの書店で手に取ってほしい。


 

 

▼暫く、僕の評価基準かなり高くなりそうだなぁ……

▼『コスパ』で生きてるような人間にはその顔面に叩きつけたいよね。

▼ではでは。


※サムネ用


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