レビュー 『六人の赤ずきんは今夜食べられる』

※今回のレビューはネタバレ成分マシマシの『考察』要素を過分に含みます。それを了承した上でお読みください。


▽らの~(短縮系)

▽うぃずだよ。

▽電撃文庫の売上が何となく不調で、何とかしなきゃとか考えてて最近あまりラノベ読めてなかったんだけれども。

▽周りのラノベ読みが皆読んでるライトノベルがあってね、それに続く形で読んだのが今回感想を書く『六人の赤ずきんは今夜食べられる』なんだけれども。

▽何とも、考察が捗る内容でね。ネタバレ無しでの感想を書くのは難しそうなんだ。

▽ということで、読み進めるのなら読了後もしくはネタバレを気にしない人だけにして欲しいかな。

▼それでは、本文へどうぞ▼






『六人の赤ずきんは今夜食べられる』

著 氷桃甘雪 先生
イラスト シソ 先生


 ガガガ文庫より発売された本作は、『第12回小学館ライトノベル大賞』の受賞作のうちの一つである。

 『パニックミステリ』を銘打っているが、難しく考えずとも『ダークファンタジー』として楽しむことも可能な作品となっており、その内容は『グリム童話』をモチーフとしている。

 受賞時のタイトルが『グリムの赤い万華鏡』であることからも明らかだ。

 さて、この作品は『襲ってくる狼から赤ずきん達を守る』ということが目的であることからその根幹はかの『赤ずきん』であると誤解しがちだが、実際は『狼と七匹の子山羊』が主軸であると思われる。
 
・知恵を持つ狼であること
・紅茶ずきんが『時計の中に逃げ込んでやりすごしていた』こと
・狼が足に『パン生地』を付けて足音を消していたこと
・また、狼が『化けていた』存在であること。


 これらは、『赤ずきん』というよりは『狼と七匹の子山羊』との一致点である。

 確かに赤ずきんの狼も知恵が無い、という訳では無い。『浅知恵』だが。

 対して、『子山羊』狼は明らかに目的に対して『狡猾』であった。

 チョークで声音を変える・パン粉で足の色を誤魔化す。こんな芸当は『浅知恵』とは言えない。

 今作に登場する狼も、その知恵と恵まれた体躯を駆使して赤ずきん達と主人公を追い詰めることとなる。


 さて、先ずは感想から入ろう。

 僕自身の素直な感想として、かなり楽しめたと言える。

 ミステリと言うだけあって、散りばめられた伏線が収束していく様は読んでいて嘆息ものであったし、狼との緊迫した対峙も実際に自分が追い詰められている様な錯覚すら覚えた。

 文学として読むのなら、かなりの完成度と言える。

 しかし、これはライトノベルである。そのことを前提に評価をするとするのなら、如何せん『キャラクター性に欠ける』と言わざるを得ない。

 無論、文学としての完成度は上で言及した通りなのだが、シナリオの強さに対して一部のキャラクターの弱さは否めない。

 それぞれの持つ秘薬の力もあって、どうしても『この能力の秘薬を持つ赤ずきん』というギミックで捉えてしまうのである。

 1巻でそれを求めるのは酷なのかもしれないが、それが弱いということはライトノベルとして致命的である。

 キャラ付け自体はされている為、もっと濃いキャラクターであれば良かったのに、と思わずには居られない。

 しかし、それを加味してもこの作品は『満点』であると判を押そう。文句あるならコメントしやがれ。

 では、本題だ。
 ここから先は、個人的な考察に入らせて貰おう。
 前提知識としては

『狼と七匹の子山羊』
『赤ずきん』
『シンデレラ』
『白雪姫』


 辺りを抑えておくといいだろう。

 先ず、本作の敵は狼だけではない。

 その狼を作り出した『魔女』が赤ずきんの中に紛れ込んでいるのである。

 この魔女は『秘薬の効果を延長する秘薬』を作り出すことができ、その秘薬によって『1日だけ、年齢を自在に変化させる秘薬』の効果を延長して長い時間を生きていた訳なのだが、更に『塗った物が世界の真実を語る秘薬』を鏡に使って、様々なことを聞いていた訳だ。

 その鏡がある日『世界で1番美しいのは赤ずきんである』と答えてしまう。

 ここは白雪姫オマージュだね。

 その魔女は妃さまであった訳なのだけれども、この鏡の言葉によって『王の寵愛が赤ずきんに向いてしまうのではないか』と考えてしまう。

 鏡は『妃が赤ずきんに手をかければ破滅を招く』というような予言もしていて、実際に国外追放を受けることとなる。

 じゃあ『自分の手を汚さなければいいじゃない』と狼を作って更なる赤ずきん狩りを始めてしまう訳だ。

 その魔女を赤ずきんの中から見つけ出すのがミステリ部分の訳なんだけど、作中の伏線が読者を度々惑わせる。

 最終的には『臭いを消す秘薬』には実は狼から捕捉されてしまう効果があることが分かり、誰が魔女であるのかが分かるわけなんだけどね。

 ここで誰であるかは言及しないけれども、判明した時は『まさか!』と思ったものだよ。

 狼の正体については、早いうちから気がつけていただけに少々悔しくはあった。

 実は狼の正体は、姿を変えられていた『元赤ずきん』

 狼に変えられた赤ずきんは、元に戻る為に同じ赤
ずきんを喰らおうとする。

 『姿を変える秘薬』によって狼に変化させられており、その秘薬を作った赤ずきんの血を使うことでしか元の姿には戻れない。

 知識も狼相応になってしまうのだけれども、年に一度の『赤い満月』の日だけ知性が人間に戻る。

 その日に、元の姿に戻る為に赤ずきんを襲う訳だ。

 子山羊=赤ずきんと考えれば、姿を変えられた赤ずきんと魔女が成りすましている赤ずきんを含めて丁度『七人』となる辺り、良く考えられていると思う。

 足にパンを纏わせて音を消したのは、『七匹の子山羊』でパン粉を纏わせて子山羊を騙したところからのオマージュだろうね。

『白雪姫』や『子山羊』など、この作品はいくつかのグリム作品オマージュが高度に組み合わされて構築されていて、素直に賞賛できるよ。

『ジェヴォーダンの獣』というネーミングは、主人公のモチーフであると思われる『青ひげ』がジル・ド・レモチーフであるから(史実でジェヴォーダンの獣が最初に食い殺した少女の名前がジャンヌ・ブル)と今のところでは考えているけども主人公が本当に『青ひげ』モチーフなのかも怪しいところだよね。

 童話の青ひげは塔で妻を殺してはいたけれど、主人公のように村を殲滅した訳では無いし、正直共通点がほぼ無いんだよね。

 これも2巻以降で語られるのかもしれないけれど……本当に『青ひげ』であるのなら、狼との戦いが『塔』で行われたことにはなにか意味があるのかもしれない。

 深読みするのなら、今後『塔』に住むことになった主人公がヒロイン達を手に掛けることになったり――ね?

 流石にそれはないと思うのだけれども。

 色々調べてはいるけれど、青ひげに関しては『残虐な金持ち』以上の情報が出てこないんだよねぇ……。

 少なくとも、『青ひげ』と主人公は全くと言っていいほど結びつかない。青い髪をしているだけだからね。

 であるのなら、これは次巻以降の伏線であると考えるのが1番だろう。

 まさか読者をニヤッとさせる為だけではないだろうし、2巻に期待だね。






▽考察と言いながら大したことは書いてないんだけど。

▽まぁ、全てを語り尽くしても面白くないだろう。是非とも、皆も買ってみて読んでほしい。

▽本当にミステリとしては面白いからね。ライトノベルレーベルである必要ないくらい。

▽グリムオマージュとしての完成度も高く、神話童話好きの僕は終始にやにやしながら読み進めていたよ。

▽これ『あの作品』じゃね?とか気がつけた時は脳内麻薬が溢れること。

▽きっと、書店での入荷数は少なめだろうから気になった人は直ぐ買いに行ってほしい。

▽それだけの出来だからさ。

▽さて、それでは今回はこの辺りで。

▽更新ペースが遅くなってることは申し訳ない……。

▽週に3回ぐらい、出来れば毎日書きたいんだけどね。

▽ライトノベル読むのも時間かかるからさ、大目に見てほしい。

▽ではでは。

▼また次回、お待ちしております。
 
 
 
 
※サムネ用



 
 

コメント

非公開コメント

「柱時計の中に隠れる」の元ネタは7匹の子山羊だったのですね。
思い出せなかったので助かりました。
ジルドレとジェヴォーダンの獣のつながりなど自分では気づかなかった発見があり、大変参考になりました。

主人公の名前についての考察(というよりメタな予想)を書かせて下さい。
ご存知かも知れませんがこのラノベは元はwebに投稿されていた作品で、一巻とほぼ同じ展開をして完結しました。
書籍化にあたって設定が追加(魔女と召使いの姉妹関係と因縁)や変更(一部の赤ずきんの設定や秘薬の効果)や消去(紅茶ずきんが魔女の子という設定やバラずきんの本名がグレーテル)されているのですが、主人公の名前はそのままです。
つまり、作者は主人公の名前を「変えるか消すべき設定」とは思わなかったということです。
同じく最後になって出てきたグリム童話ネタにシンデレラがありますが、こちらは書籍化にあたって「元は平民で王に見初められて結婚」などのモチーフが追加され補強されました。
しかし主人公には何のモチーフの追加もありません。それで問題ないと判断されたのです。
青髭をモチーフとしたキャラの青髭らしさが過去にも現在にも無いなら…未来にあると考えるのは、突飛な発想ではないと思います。

いつか、彼の罰は彼に追いつくのでしょう。

上の方へ

▽当ブログへのご来訪、ありがとうございます。
▽Web連載作品だったというのは初めて知りました、そちらは読んでないので少し調べてみますかね。
▽青髭という名前を上手く使った展開をしてくれれば……さらに面白くなるであろう作品だけに、僕も妄想を膨らませながら次巻を待ち望んでおります。